食生活を考える
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 生活習慣病の予防には食生活の改善が極めて重要です。

 この食生活のあり方について考えるときに、参考になるのが、いわゆるマクガバンレポートと呼ばれる、1977年にマクガバン議員を委員長とするアメリカ上院栄養問題特別委員会が提出したレポートです。

 ◆ マクガバンレポート ◆ 
 1971年、アメリカのニクソン大統領は、国家的プロジェクトとして「ガン撲滅計画」をスタートさせ、巨額の研究費を国立ガンセンターなど、西洋医学を中心とした政府機関に投じました。アメリカ建国200年を迎える1977年までにガンを撲滅するという作戦でした。しかしガンは年々増え続け、結局ガン戦争に勝てませんでした。
 この計画は実現されないまま、1977年にマクガバン議員を委員長とするアメリカ上院栄養問題特別委員会が膨大なレポート(いわゆるマクガバン・レポート)を発表しました。

 この委員会が設置された理由は、
「ガン、心臓病をはじめ多くの病気が増えている。そして進歩したとされるアメリカの医学を活用し、しかも巨額の医療費が注ぎ込まれているのに、アメリカ国民は病気ばかり増えてますます不健康になるばかり。この原因を解明し根本的な対策を立てないことにはアメリカは病気で滅んでしまう」
というものでした。

 そして、二年間にわたる審議調査の結論として重要な結論が幾つか出されました。
 その中で特に重要な結論は、

 ガン、心臓病、脳卒中など生活習慣病は、現代の間違った食生活すなわち、食事の欧米化が原因になって起こる、”食源病”である。
 この間違った食生活を改めることでこれらの病気を予防する以外に先進国民が健康になる方法はない。

でした。食事や栄養のとり方と病気の関連が初めて公式の場で明らかにされたのです。

 食事の欧米化とは、次の二つです。

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 脂肪と動物性たん白質、砂糖の増加
動物性食品の過剰(動物性たん白や動物性脂肪)、脂肪全体の過剰および脂肪全体の中での動物性脂肪と植物性脂肪の比率の悪さ(動物性脂肪の比率が高すぎる)、砂糖の過剰摂取。

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 ビタミン・ミネラルや食物繊維の減少
自然な形の野菜や果物の減少、食品の過度な加工によるビタミン・ミネラル・食物繊維の減少。

 このマクガバン・レポートが発表されてからの、アメリカにおける健康政策の動向を見てみると、

  国立ガン研究所(NCI)は、ガンに対して、抗ガン剤や放射線、手術などの従来の治療法によって対処するのとは全く違った新しい療法、すなわち栄養療法の研究に着手し、ほかにも世界最大のガン研究所といわれるスローン・ケタリング・ガン研究所や大学で栄養療法の研究プロジェクトが進められるようになる。

  1979年厚生省が「ヘルシーピープル」という国民的健康政策を打ち出す。(生活習慣の改善による、健康の実現に重点を置いた健康政策)
 
 ◆ 1980年農務省と保健福祉省が「栄養とあなたの健康」という食事のガイドラインを発表。

 ◆ 
ガンと食事の関連性が注目されるようになり、1983年アメリカ科学アカデミーが「食物・栄養とガン」というレポートを発表。

 ◆ 国立ガン研究所が1990年に「デザイナーフーズ計画」すなわち、「植物性食品によるがん予防」というプロジェクトをスタートさせる。ガンを食事により予防できるのではとの仮説をたて、膨大な量の疫学調査のデータを集め、予防に効果な食品および食品成分約40種類をピックアップし、その重要度に合わせて、ピラミッド型の図を作った。

 ◆ 
1994年、「栄養補助食品健康教育法(DSHEA)」が成立。医薬品でも食品でもない栄養補助という新しい分野を作り上げた。

 ◆
 1997年9月、「世界がん研究基金」と「米国がん研究財団」は「食品、栄養とガン予防:世界的展望」というタイトルのレポートを発刊。
  このレポートは、いままで食生活とがん予防に関する世界で発表された4500を超える学術論文を、15人の専門家が丹念に解析した結果をまとめたもの。その結論的な提言は、「がん予防の食生活ガイドライン」として、まとめられる。

 このように米国の疾病対策は治療から予防へとシフトしたのです。

 ◆ 日本における食生活の変化 ◆ 

 日本における食生活の変化(欧米化)は、1960年高度経済成長期を迎える頃より始まりました。

 戦後しばらくは食料事情が貧しく、どんなものでも口にしましたが、
 1950年代後半に入り、電化ブームにのりトースターや電気冷蔵庫が発売され、
 またインスタント食品が登場することにより、食生活は一変しました。(1958年にインスタントラーメン、1960年にインスタントコーヒー)
 一般の家庭に冷蔵庫が普及し、まさに豊かな食生活の象徴となりました。

 海外から肉や穀物などの食品が大量に輸入され、食生活はゆたかになりました。生活の豊かさを求め、食生活を含めたライフスタイルの欧米化を推進してきました。特に食品においては”美味しさ”を追求し食を「口で味わう」時代が到来しました。

 高度経済成長以降、1970年代には、街角にハンバーガーやフライド・チキンなどのファーストフードの店やファミリーレストランがあらわれました。気軽さ、低価格などがうけ、これらの外食産業は急成長しました。

 1970年代後半からは、食のレジャー化、ファッション化の時代となり、
 
1980年代のバブル絶頂期にはグルメブームが起こり、飽食の時代といわれるようになりました。

 食品が豊富に出回り、外食の機会が増えて、食べたいと思えば世界中の食べものが容易に手に入り、口にできるというのが現状です。こうした状況は、食品選びの自由さには事欠きませんが、ともすれば、美味しいもの、珍しいものを求めて、嗜好に偏った食生活へと流されることになりがちです。

 ライフスタイルから見れば、
 夫婦共働きや単身生活(学生や高齢者や独身者、そして単身赴任者)の増加により、弁当、惣菜、調理パン、そして加工食品(カップ麺やレトルト食品)など、手間をかけずにすぐに食べられるものが人気を呼んでいます。
 また、「食べる時間」は、個・孤食化の傾向があり、「食事に時間をかけず、すぐに済ませてしまう」ことが多いようです。
 つまり、家族はそれぞれバラバラに別のものを食べたり、別の時間に食べることが多かったり、そして食事の時間が不規則になりました。
 夫は通勤時間が長くなって夕食時間に間に合わず、子どもたちは塾などで帰宅が遅くなります。妻はパートなどで忙しいといった状況です。

 結局、食生活は、相当大きな部分を外食産業やコンビニやファーストフードチェーン、そしてテイクアウト店(弁当屋、惣菜屋)などに頼ることになりました。
 そして、それとともに「食品の安全性」の担い手は個人から企業の方へシフトする傾向にあるようです。「食」が経済至上主義の論理の中に組み込まれ、「食物」が「食品」と呼ばれるようになり、いつのまにか大切な栄養素が削り取られた加工食品に食卓を牛耳られる格好になってしまいました。
 言い換えると、食べ物の価値が、農家と消費者の関係のなかでは実感できずに、むしろ加工品の製造業者・流通業者と消費者との間で、食べ物ではなく単なる商品として扱われるようになってしまいました。

 最近では食べ物の多くが見栄えよく包装され、店頭を飾っています。今日の豊かな食生活は、これらの包装食品によって支えられていますが、多くの場合、私たちはこうした見かけで食品を選択しがちです。
 食べ物を視覚的、経済的ポイントで評価すべきではないと思います。


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