ボウル・ケア 学術調査
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チャイニーズ ジャーナル オブ インターナル メディスン
(Chinese Journal of Internal Medicine) 1997 :3(1): 30-34
中国ハーブ薬による過敏性腸症候群(IBS)の治療研究
Yan QM, Chen Y, Lain Nan, Guo GF, Mu HJ, Zhao GL, Cao JG, Mai MQ and SUN DM
成都・成都軍区 Huaxi医科大学総合病院

要約:
注1肝気鬱血(LQS)と過敏性腸症候群(IBS)の病因の関連を、臨床上そして実験的に研究しました。

注1肝臓が伸びやかに働くことができない状態。

方法:
肝臓に滋養を与える成分を使用しているBowelCareで治療されたグループと参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)として知られている漢方薬で治療されたグループの効果を比較します。

結果:
BowlSoothを使用したグループの効能は96%、参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)を使用したグループは82%という結果になり、違いは統計的にも重要な違いがありました。(p<0.05)○注2 E−ロゼット形成率とリンパ球の転換率は、治療前に比べると両グループとも非常に高くなりました。自律神経機能不全の改善率は、参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)のグループよりもBowelCareのグループの方がかなり高くなりました。(p<0.01)IBSモデルのラットにおいて腸の○注3スチレン化フェノール(SP)のレベルと、血管作用性腸管ポリペプチド(VIP)のレベルを測定した結果、SPとVIPのレベルは、IBSグループの中では大きく上昇しました。それらの数値をIBSモデルのグループで比べると、BSで治療したグループが明らかに低くなりました。(p<0.01)参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)グループに対してBSグループには大きな改善が見られました。(p<0.01)

注2 ヒトT細胞がヒツジ赤血球(E)と抗原非特異的に結合して形成するロゼットのこと。
ロゼットとは、細胞がバラの花様に放射状・輪状に配列している形態

注3 環境ホルモンの一種。

結論:
BSにはIBSの症状を取り除くという優れた作用があります。これは神経学・内分泌学・免疫学を軸として調整したことによる作用かもしれません。
IBSは特発性で、非炎症性の腸障害です。著者はIBSの420症例の集団検診を通じて、IBSの主な症状の他に394症例(94%)でうつ病・疑い症・不安症・激情傾向などのような情緒障害が明らかになったことを発見しました。これは中国伝統医学(TCM)では、肝気鬱血(LQS)とみなされます。著者はLQSとIBSでの病因関連を調査するためにLQSの性質を調査して、LQSと実験的に誘発されたIBSモデルのラットにおいてIBS患者の数値を求めました。

臨床実験
臨床データ:
保険省総務部PLAによって開発された診断方法にしたがって診断された82名の過敏性大腸症候群(IBS)患者を診察室に来た順番にランダムにふたつに分け、BowelCareグループ(BSグループ、50名)・参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)として知られている漢方薬を使う対照グループ(コントロールグループ、32名)としました。 BSグループの内訳は、男性35名・女性15名で年齢は21歳〜64歳で平均年齢は41.36歳 +/‐10.40歳、発病からの期間は0.5〜27年間で平均10.22年 +/‐4.37年間となっています。対照グループの内訳は、男性18名・女性14名で年齢は23歳〜66歳で平均年齢は8.11歳 +/‐11.68歳、発病からの期間は0.67〜25年間で平均10.29年間となっています。 被験者は全員IBSと診断されており、情緒障害・腹痛・下痢・粘液便・しぶり腹(テネスムス)・等時脈などのような主な症状を明らかにしました。情緒障害があるとき、胸のつまり・食欲不振・腹部膨張など1〜2の二次的症状も観察されました。この2つのグループの臨床状態は類似しました。(p<0.05)

治療方法:
BSグループはBowelCare 1パック10mgを1日3回与えられました。これは漢方薬で、芍薬(しゃくやく)の根(white peony root)・白朮(おけら)の根茎(Atractylodes rhizome)・ しょうずくの種(Cardamon seed)・へくそかずらの茎(Paederia scandens stem)・八丈菜(Sonchus brachyotus entire plant)・中国甘草の根(Chinese licorice root)などのハーブエキスが含まれています。対照グループは参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)として知られている漢方薬が与えられました。これには丁字の根(Codonopsis root)・白朮(おけら)の根茎(Atractylodes rhizome)・自然薯(Wild yam rhizome)・中国甘草の根(Chinese licorice root)・はと麦(Job's tears seed)・キキョウ根(Balloon-flower root)・しょうずくの種(Cardamon seedなど)が含まれています。一回に136gを煎じて1日3回与えられました。 どちらのグループも30日間摂取し、自律神経機能の評価と○注4免疫パラメータを治療前後に調べました。

注4 免疫の要素

結果:
治療の効能は、以下の基準によって判断されました:(1)臨床上回復:臨床症状は消えました。 (2)効果あり:臨床症状は大幅に改善されました。(3)効果なし:臨床症状はわずかに改善されました。
BSグループでの50症例の総合的な効能は、39症例(78%)が臨床上回復されることを示しました; 9症例(18%)に効果があり、2症例(4%)には効果がありませんでした。効果があった割合は96%でした。対照グループでは、13症例(40.7%)が臨床上回復、14症例(43.8%)に効果あり、5症例(15.6%)には効果がありませんでした。84.4%の割合で効果がありました。このふたつのグループには有意差がありました。(p<0.05)グラフ1

グラフ1.IBSの治療における、BowelCareと漢方薬(参苓白朮散 煎じ薬)の治癒効果(n=63)

治療前後の免疫パラメータを表1に示しています。データは、治療後は治療前に比べてE-ロゼット形成率とリンパ球の転換率が両グループで大幅に増加していることを示しています。(p<0.01)しかし、ふたつのグループに有意差はありませんでした。(p > 0.05)免疫グロブリンレベルの変化は異なり、BSグループの免疫グロブリンA(IgA)は治療後に低下、治療前に比べると重要な違いがありました。(p<0.01)この結果、BSは細胞免疫を増加させることを示唆しています。

表1.治療後の免疫パラメータの変化(x-bar +/-σ,n=22)
  E-ロゼット形成率リンパ球の転換率IgG(g/L)IgA(g/L)IgM(g/L)
BS治療前60.42+/-3.1551.37+/-3.6913.69+/-3.292.23+/-0.891.94+/-0.91
治療後65.43+/-4.78*57.82+/-5.09*14.61+/-1.051.76+/-0.37*1.88+/-1.37
対照治療前60.44+/-3.0451.42+/-3.7913.27+/-3.432.34+/-0.831.91+/-0.94
治療後64.97+/-3.23*56.97+/-6.05*14.24+/-2.062.27+/-0.911.87+/-0.09

*p<0.01

自律神経機能検査には、自律神経の均衡状態指数・寒冷昇圧試験・四肢加温検査・皮膚温測定などがあります。すべての検査は室温で行なわれます。上記の項目が正常であれば患者は異常なしと記録され、3項目の検査で2項目以上が交感神経の優位性を示したとき、交感神経機能亢進とされます。4項目の検査で2項目以上が副交感神経の優位性を示したとき、副交感神経機能亢進として記録されます。結果は表2に示しています。

表2.自律神経系の比較〔人数(%)〕

  人数交感神経機能亢進副交感神経機能亢進両方の機能亢進正常
BS治療前501(2.0)4(8.0)44(88.0)1(2.0)
治療後4901(2.0)2(4.1)46(94.0)
対照治療前321(3.1)3(9.4)26(81.3)2(6.3
治療後3001(3.3)8(26.7)21(70.0)

注意:治療前に正常な神経機能をもつ3症例の治療後(対照グループ2つのうち1つは治療済み)は、比較に関して提示されていません。

治療前の82症例のうち79症例(96.3%)が自律神経の機能傷害が明らかにされ、そのうち70症例(85.4%)が交感神経系と副交感神経系の機能亢進を示しました。治療後は、神経機能障害の程度が両グループでかなり低下しました。(p<0.01)この変化は統計的にみて、対照グループよりもBSグループのほうが大きくなりました。

実験的研究
対象と方法:
体重180グラム +/-20の41匹のウィスターラット(四川省の実験用動物管理センターから提供)を正常グループ(グループA・10匹)・モデルグループ(グループB・10匹)・BSグループ(グループC・11匹)・対照グループ(グループD・10匹)に分けました。B・C・Dのグループのラットの大腸に15%の酢酸(0.2ml/ラット)を注射し、化学的にIBSを誘発させました。

BSグループのグループCには毎日の胃洗浄により、BS(体重1kgにつき2.2gのハーブ)を与えました。対照グループのグループDには参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)(体重1kgにつき1.36gのハーブ)を与えました。治療20日後、各ラットから大腸5gを取り出して直ちに重さを量り、事前に冷却しておいた試験管の中に入れました。0.1N塩酸を適量加え、その中で蛋白分解酵素を活性化機能させないために10分間沸騰しました。それから均質化させ、20分間1,600rpmで遠心分離しました。沈殿物は処分し、上澄みは測定まで20℃で保存しました。

放射免疫測定薬(北京航空宇宙医学エンジニア協会の生化学センターが提供した試薬)でスチレン化フェノール(SP)と血管作動性腸管ポリペプチド(VIP)を測定しました。保存した組織1gに対するVIPとSPの含有量を調べました。

VIPとSPのレベルはグループB・C・Dで上昇し、正常のグループと比較したとき有意差(p < 0.01)がありました。BSグループでは治療後、SPとVIPのレベルがモデルグループ(p<0.01)と対照グループ(p<0.01)に比較するとかなり下がりました。治療後、対照グループのSPとVIPレベルはモデルグループよりも低かったですが違いはわずかなものでした。(p > 0.05)これらの結果が示すことは、IBSモデルのラットのSPとVIP含有量はどちらも大きく上昇することを示唆し、BSはSPとVIPレベルを調整する効果があるということです。

結果:
治療前後のVIPとSPの変化を表3に示しています。

表3.SPとVIPの腸内レベルの変化(x-bar+/-σ)

グループSP(ng/g)VIP(ng/g)
A−正常1023.85+/-0.60813.20+/-87.86
B−モデル1035.50+/-5.66*1560.70+/-239.25*
C−BS1128.36+/-5.10^1217.36+/-175.51^
D−対照1034.90+/-6.421532.40+/-257.80

*p<0.01正常グループAと比較;^p<0.01モデルグループBと比較

考察:
この研究では、IBS患者が自律神経機能障害・細胞媒介性免疫の減少・体液性免疫不全を表すことが明らかにされました。実験的なIBSにおいて、この研究ではGIホルモンのSPとVIPが大きく上昇することが示されています。
神経・内分泌腺(GIホルモン)・免疫システムの中には、互いに依存している相互作用の循環経路が存在していることが最新の調査で既に証明されています。胃腸ホルモンは自律神経系のコントロールによって放出され合成されます。そして神経の調整や免疫システムだけでなく、消化・運動・吸収・血液循環・GIシステムの細胞の栄養状態に影響を及ぼし調整する働きをしています。特定のGIホルモンが増えたり減ったりすることで、病気の原因となる胃腸・免疫・神経システムの障害を誘発する可能性があります。SPとVIPは重要な非循環型ホルモンです。SPは腸の蠕動運動を刺激し、VIPは腸液の分泌を刺激します。これらはGI粘膜と腸の筋肉を調節する作用があり、GIの運動および腸内分泌のペプチドを調節するのに重要です。しかしSPとVIPの濃度が高くなることで腸の平滑筋が刺激され、収縮性が強くなり平滑筋が痙攣します。そして腸蠕動を速め腸の分泌物が増えて毛細血管透過性が変わり、虚血と無酸素症による粘膜変化を引き起こすために腹痛・下痢・粘質便・しぶりが起きます。SPとVIPの関係する免疫細胞の受容体結合機能にも異常をきたし、免疫機能傷害が起こります。GI毛細血管透過性の変化と免疫機能傷害が続くと、大脳の機能障害が起こり自律神経の調節障害を引き起こします。このような悪循環が起こり、IBSの臨床症状と発症が起きます。

IBSの病原過程において、SPとVIPは神経系の神経伝達物質として、消化器系でGIホルモンの働きをします。またSPとVIPは免疫システムにおいて免疫の機能不全を生じるため、免疫細胞と関係する受容体と結合することがあります。この現象、すなわち同じ物質が3つの異なるシステムで利用されていることで、神経免疫・GIホルモン・GI器官の関係を示しています。これは神経・内分泌腺・免疫の機能傷害がBS病原の重要な要因の可能性であることを示しています。

BSはこの研究においてIBS患者の治療に効果的であることを示しました。様々な指標はBS投与後にそれぞれの段階で向上しました。BSは肝臓に滋養分を与え・血液機能を高め・痛みを軽減するためGI痙攣を減少させます。白朮(おけら)の根茎(Atractylodes rhizome)は脾臓を強化し、下痢を緩和するために水分を排出します。へくそかずらの茎(Paederia scandens stem)と八丈菜(Sonchus brachyotus entire plant)は、うっ血を取り除き、肝臓と脾臓に滋養分を与えるために側副の血流を活性化して、注5側副血行を促し下痢を止めます。最近の研究では、芍薬(しゃくやく)の根(White peony root)が大脳皮質の障害を改善して、自律神経機能を調整することが分かりました。また痙攣を緩和し、痛覚脱失を促す作用もあります。白朮(おけら)の根茎(Atractylodes rhizome)としょうずくの種(Cardamon seed)は、網状内皮系の食細胞機能を高めます。IBSの治療におけるBSの薬理作用は、神経内分泌と免疫の関係を調整するために、病因および様々な病理学に関連したIBSに直接作用して、健康な粘膜をつくることで結腸の内部環境を改善します。

注5 正常安静時の血行路のほかに、活動時または正常血行路が閉塞された場合などに、別の多くの血行路が開かれ、その臓器の血行を保ち、あるいは血流量を増すことができる。このような予備的な循環路をいう。・・・最新医学大辞典

 



 





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